はじめに
中小企業の社長から、よくこんな相談を受けます。
「節税の方法を教えてほしい」
「決算前に経費を増やした方がいいですか?」
SNSやYouTubeを見ても、節税の情報であふれています。
「社長なら節税しないと損!」といった言葉を見れば、焦る気持ちもわかります。
しかし、私が公認会計士として数百社の中小企業に関わる中で強く感じるのは、
節税だけでは経営の不安は解決しない
という現実です。
節税は一時的に税金を減らしますが、
会社の将来を安定させることにはつながらない場合がほとんどです。
では、経営の不安を本当に解消するにはどうすればいいのか。
ここからは、私が顧問先の社長にいつもお伝えしている考え方を、会話形式で解説していきます。
社長と会計士の対話:節税より大事なこと
社長(田中さん):
「川村先生、最近どこを見ても節税の情報ばっかりですね。
SNSでもYouTubeでも『節税しなきゃ損』って。
やっぱり節税にもっと力を入れたほうがいいんでしょうか?」
会計士(川村):
「節税も大事ですが、田中社長。節税だけで会社の悩みは解決しませんよ。」
田中社長:
「え?でも税金が減れば、その分お金は残りますよね?」
川村会計士:
「確かに一時的には残ります。でも、私がこれまで見てきた中小企業でも、
節税に力を入れているのにお金に困っている会社はたくさんあります。」
田中社長:
「え、節税してるのにお金に困るんですか?」
川村会計士:
「そうです。理由はシンプルで、経営の悩みは節税では解決できないからです。
節税は、あくまでお金の流れを一時的に変えるだけ。
会社の根本的な不安は、“将来どうなるか分からない”という部分にあります。」
理想の会社像を描くことが不安を消す
節税をしても不安が消えないのは、未来の方向性が曖昧だからです。
まず必要なのは、自分の理想の会社の状態を思い描くことです。
例えば、こんなイメージです。
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社員が安心して働ける会社
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毎月安定した利益が出る会社
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社長が現場に張り付かなくても回る会社
この理想像が明確になると、経営の判断軸がはっきりします。
「やるべきこと」「やらなくていいこと」が整理され、迷いが減ります。
理想を数字に落とし込む「事業計画」の重要性
理想を描くだけでは、まだ“夢”の段階です。
次に必要なのは、その理想を数字と行動に落とし込むことです。
つまり、事業計画を作りこむことです。
事業計画では、以下のようなことを具体的に数字にします。
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売上目標(顧客別・商品別)
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粗利と利益の計画
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必要な人員と人件費
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設備投資やIT投資の計画
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資金繰りの見通し
これを作り込むことで、
「売上をあといくら伸ばせば人を増やせるか」
「どの投資なら利益率を上げられるか」
が数字で見えるようになります。
数字で未来が見えると、社長の不安は大きく減ります。
節税は「最後の仕上げ」でしかない
節税はあくまで、利益が出てから考える最後の調整です。
経営の不安は、未来が描けないことから生まれます。
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理想の会社像を描く
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それを事業計画に落とし込む
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未来の行動が数字で見える状態にする
このプロセスを踏むことで、社長は「未来に備えた経営」ができます。
節税だけに時間を使うのは、未来への投資を後回しにしているのと同じです。
まとめ|未来を描くことが最大の節税になる
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節税だけでは経営の不安は消えない
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不安を消すには、理想の会社像を明確にすること
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事業計画に落とし込み、数字で未来を描くことが重要
数字で未来が見えると、行動が変わります。
行動が変われば、利益が増えます。
利益が増えれば、結果として節税の選択肢も増えます。
つまり、未来を描くことこそが、最大の節税効果につながるのです。