うまくいかない経営目標のたて方

~「たった1つの目標」が利益を変える~


「全部やろうとする経営者」がうまくいかない理由

今の時代、経営ノウハウはネット上に溢れています。
YouTube、Instagram、ビジネス書、ChatGPT……
「成功するための方法」を検索すれば、100を超える手法が瞬時に手に入る時代です。

たとえば、

  • 売上アップの方法10選

  • コスト削減のチェックリスト

  • モチベーションを上げるマネジメント術

  • PDCAを回す仕組みづくり

  • 採用・育成・評価制度のベストプラクティス

こうした情報を目にしたとき、行動力のある経営者ほど「よし、やってみよう」と前向きになります。さらに社員も真面目で一生懸命だと、「全部やりましょう!」と一丸になって取り組みます。

しかし、ここに落とし穴があります。
やることが多すぎて、どれもうまくいかない

行動量はあるのに成果が出ない。頑張っているのに報われない。
実は、これが中小企業でよくある「経営目標のたて方の失敗パターン」です。


上場企業は「全部できる」でも中小企業は?

私はこれまで、日本を代表する上場企業から、従業員数10人にも満たない中小企業まで、幅広く経営支援をしてきました。

上場企業の場合、優秀な社員がいて、潤沢な予算があります。
調べれば出てくるノウハウをすべて実行する体制が整っています。
たとえば、KPIの多段管理、OKR導入、RPA活用、BI分析、ダッシュボード設計……そんな複雑な目標管理もやろうと思えば実現できます。

しかし、中小企業ではそうはいきません。
人も時間もお金も限られています。
多くの社員は現場とマネジメントの両方を兼務しており、シンプルで具体的な目標でないと、そもそも動けないのが現実です。


うまくいかない目標設定に共通する2つの原因

私の顧問先や支援先を見ていると、目標が達成できない会社には共通点があります。それが以下の2つです。

  1. 目標を覚えていない

  2. 目標の振り返りをしていない

これ、シンプルですが非常に本質的な問題です。
せっかく時間をかけて戦略会議で目標を決めても、翌月には誰も覚えていない。月末に慌てて「あれ、今月の目標って何でしたっけ?」と聞かれる。

あるあるですよね。

結局、覚えられない目標は、実行されないのです。
だからこそ、中小企業が設定するべき目標には、ある“鉄則”があります。


中小企業に必要なのは「覚えやすく、測定できる」目標

では、どうすれば目標が形骸化せず、実行・改善に結びつくのか?

答えはシンプルです。

覚えやすく、数字で測定できる目標にすること。

たとえば、私の支援先ではこんな目標を立てています。


実例:「交際費は月10万円まで」

え、それだけ? と思われた方も多いかもしれません。

でも、このたった一つの数字目標が大きな変化を生んだのです。

・以前は交際費が月20万円を超える月もありました。
・目標を決めたことで「今月はいくら使ってる?」という意識が社員全体に浸透しました。
・数字を月末に確認する習慣がつき、「なぜこの金額になったのか」を毎回分析するようになりました。
・気づけば交際費だけでなく、会議費、旅費交通費も見直すようになっていました。
・結果として、年間で1,000万円近くの利益改善につながったのです。


目標は「経営行動のクセづけ」のためにある

この事例のように、経営目標は壮大である必要はありません。
むしろ、日々の行動に“クセ”をつけるための仕組みと考えると良いでしょう。

「今月の数字をチェックする」
「理由を考える」
「来月の行動を微調整する」

このPDCAの最小単位を回すだけで、会社はじわじわと変化します。


「色々やってもうまくいかない」時は、やることを1つに絞る

経営とは、「やらないことを決めること」です。
戦略とは「何を捨てるか」を決めることでもあります。

目標も同じ。あれもこれもと詰め込むのではなく、たった1つでいい。

1つの目標に集中し、
毎月数字で確認し、
原因を考えて行動を変える。

これだけで、会社の体質は間違いなく変わります。


まとめ:成果を出す目標には「3つの条件」がある

最後に、うまくいく経営目標の条件を整理しておきましょう。

成果を出す目標の3条件

  1. 覚えられるくらいシンプルであること
     → 長文や抽象的な言葉ではなく、ひとことで言える目標

  2. 数字で測定できること
     → 感覚ではなく、データで判断できる目標

  3. 毎月確認・振り返りができること
     → 振り返りがないと、改善行動につながらない


経営目標に悩んでいる方へ

「どう目標を立てればいいか分からない」
「頑張っているのに結果が出ない」

そんな経営者の方に伝えたいのは、
**“たった1つの目標”でいい。**ということ。

むしろ、最初はそれしかやらない方が成果が出ます。
経営とは、行動を変える仕組みです。
その第一歩が、「覚えられて、測定できる、1つの目標」です。


あなたの会社の目標、覚えていますか?

「全部やってもうまくいかない」なら、
「やることを1つに絞る」ことから始めてみてください。

それが、利益を生む「うまくいく経営目標のたて方」です。

POST: 2025.04.27